平成ミステリ・ベストテン 国内編

 いよいよ平成が終わります。

「平成最後のこのミス」とか「平成最後の有馬記念」とか、「平成最後の〜」というキャッチフレーズをよく見かけるようになりました。

 さて、そこで…
 平成の30年間に限定した、ミステリーのベストテンを選出してみたらどうなるだろう?
 いま私は一年に一度、竜蹄堂という一箱古本屋を出店しておりますが、その古本屋仲間に聞いてみました。

 江戸川乱歩や横溝正史、松本清張、中井英夫など、オールタイムベストテンの常連が対象外となる「平成オンリーのベストテン」です。具体的には1989年1月8日以降に発売された作品。「このミス」でいえば、第1回は昭和63年のベストテンなので、第2回から本年度版までの作品が対象になります。

「えっ、これが入るの?」とか「偏りすぎてない?」とか、いろいろご意見はあるでしょうが、こういうベストテンって、集計されたものより、個人の選出のほうが好みに合う作品が入っていたりしますので、本探しの参考にご覧ください!

 ではまず、個人のベストテンから。


 奥田英朗『最悪』 

●竜蹄堂店主・K(男性)
奇想、天を動かす(島田荘司)
クラインの壺(岡嶋二人)
火車(宮部みゆき)
三月は深き紅の淵を(恩田陸)
第三の時効(横山秀夫)
最悪(奥田英朗)
不夜城(馳星周)
重力ピエロ(伊坂幸太郎)
鉄鼠の檻(京極夏彦)
造花の蜜(連城三紀彦)

コメント:ホラーやSFに分類される話でも、入れたくなれば入れるつもりだったけど、意外にミステリ中心の選出に。小野不由美『屍鬼』『残穢』、高橋克彦『竜の柩』もベスト20なら入れたかったなぁ。


恩田陸『三月は深き紅の淵を』

●竜蹄堂店員・Aさん(女性)
魍魎の函(京極夏彦)
異邦の騎士(島田荘司)
空飛ぶ馬(北村薫)
三月は深き紅の淵を(恩田陸)
ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎)
出星前夜(飯嶋和一)
慟哭(貫井徳郎)
頼子のために(法月綸太郎)
黒い家(貴志祐介)
川の深さは(福井晴敏)

コメント:国内は、古めのやつばかりになってしまった。『最悪』は私も好き!


小野不由美『屍鬼』

●竜蹄堂店員・Wさん(男性)
奇想、天を動かす(島田荘司)
火車(宮部みゆき)
六番目の小夜子(恩田陸)
第三の時効(横山秀夫)
魍魎の匣(京極夏彦)
サクリファイス(近藤史恵)
屍鬼(小野不由美)
ベルカ、吠えないのか?(古川日出男)
造花の蜜(連城三紀彦)
煙か土か食い物(舞城王太郎)

コメント:順不同だけど、『奇想…』『火車』のワンツーフィニッシュは確定。熟慮すれば多少の入れ替えはありそう。『ロンド』(柄澤齊)とか入れても良かったかも。


中島らも『ガダラの豚』

●竜蹄堂店員・イクメンのTさん(男性)
かがみの孤城(辻村深月)
月の裏側(恩田陸)
モダンタイムス(伊坂幸太郎)
容疑者Xの献身(東野圭吾)
白夜行(東野圭吾)
カラスの親指(道尾秀介)
インシテミル(米澤穂信)
乱反射(貫井徳郎)
青の炎(貴志祐介)
ガダラの豚(中島らも)

コメント:どちらかというと、好きな作家中心の選出に。『残穢』はホラーだと思って入れませんでした!


●竜蹄堂店員・Sさん(男性)
 ベストテン選びは難しくて無理、とのことで参考作品をいくつか挙げてもらいました。
 作家としては島田荘司、宮部みゆき、中島らも、貴志祐介、湊かなえ、安生正、鈴木光司など。


●集計結果
 さて、それでは。4人のベストテンとS氏の参考作品を含めた、計5人の集計結果です。

島田荘司『奇想、天を動かす』

【平成ミステリ・ベストテン 国内編】集計結果
奇想、天を動かす(島田荘司)3/5
火車(宮部みゆき)3/5
魍魎の匣(京極夏彦)2/5
三月は深き紅の淵を(恩田陸)2/5
黒い家(貴志祐介)2/5
第三の時効(横山秀夫)2/5
造花の蜜(連城三紀彦)2/5
ガダラの豚(中島らも)2/5
ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎)作家別3/5
乱反射(貫井徳郎)作家別2/5

 3/5というのは、5人中3人が選んだという意味です。

宮部みゆき『火車』

 平成元年の作品である『奇想、天を動かす』が第1位。この頃の島田荘司にしかできない、奇跡のような綱渡りを成功させた快作です。作家別で4票を集めた島田荘司を上位にしましたが、作品としては同じ得票数を集めた『火車』も同率の1位ですね。

『ガダラの豚』はミステリというより、SFジャンルの作品でありながら意外な大健闘。ここに名前は出てないけれど「ベスト20なら」「ホラーもOKなら」という声が多かったのが小野不由美の『残穢』で、ホラーのベストテンならこれが1位だったかもしれません。

 伊坂幸太郎は、作家別では3人が投票しながら、作品は全部バラバラ。このミス1位の『ゴールデンスランバー』で代表させてもらいました。貫井徳郎も、作家別で2/5票を獲得し最後に残った10位の席へ。作品は日本推理作家協会賞の『乱反射』を代表としました。

 以上、当ブログの「平成ベストテン・国内編」でした。



コメントを残す

*