温田駅のすぐ隣の為栗駅も有名な秘境駅だが、私の乗った列車がそこに到着した時間帯は、ちょうど秘境駅ツアーのお客さんでホームが満員で写真は撮れず、そのまま平岡駅に向かう。駅舎が「ふれあいステーション龍泉閣」というステーションホテルになっている駅で、今晩の私の宿泊先である。
平岡駅に着くと、駅舎の入口には「南信州天龍村へようこそ」の垂れ幕が。
この龍泉閣の正式な住所は「長野県下伊那郡天龍村」という。
金田一少年なら、間違いなく事件が起きる名前である。
そう思ってこの駅前通りを見ると、市川崑監督作品のオープニングに出てきそうな街並みで、なかなか味がある気がしてくる。
さてこの「ふれあいステーション龍泉閣」だが、この宿は大当たり。駅舎の3Fとはいえ、簡易宿泊所ではなく、ちゃんとしたツインルームだし、4Fにある大浴場は温泉だし、1Fには宿泊客以外も利用できる食堂があり、ここで食べた清流丼(ヤマメの唐揚げ丼)は、想像していたより濃い味付けで、下山直後の疲れた身体にはとても美味しかった。
秘境駅巡り以外の目的では、あまり利用することがない立地かもしれないけれど… もし木曽駒ケ岳(駒ヶ根駅)に登ることがあれば、もう一度ここを利用してみたいと思った。
「別になんにもない町よ」と温田駅で話した地元のお姉さんは言ってたけれど、入浴したらもう汗をかくのは嫌なので、温泉に入る前に駅の周辺を散策してみる。
とにかく問題なのはこの暑さ。もう16時を過ぎているのに、余裕で30℃は超えている。もしかしたらまだ35℃近いかもしれない。普段から人通りが少ないのか、それともこの気温のせいで出歩かないのか、すれ違う人もあまりいない。
ここは谷あいのわりと大きな集落で、駅を始め家や公共施設はみな、斜面に並んで建っている。その中に、どこにつながっているか分からない坂道や石段が立体迷路のように張り巡らされており…
ん? ちょっと待て…
それって私の大好物やんけ!!!
意外にもこの平岡という町、坂道マニアや階段マニアにとっては、駅の周辺を散歩しているだけで充分に萌えられる町だった。
「そんな妙な性癖はねーよ」という方も、もし秘境駅散策の途中で時間つぶしが必要になったら、ぜひここで降りてみて欲しい。1Fには食堂があり、2Fには売店と横になれる和室の無料休憩所。4Fの温泉は日帰り入浴もできる。なかなか使える駅だと思います。
駅前の通りを、駅から少し下った場所に「満島ホテル」という白い建物があった。
「満島」というのは、昔ここにあった「満島番所」から来ているようだ。地元の人にとっては馴染み深い老舗ホテルだったらしく、Twitterに残っているログを見ると、廃業した後もこの建物を再利用して特産品の販売をするプロジェクトが2015〜2016年ごろまで進行していたらしい。
今ではそのTwitterの更新もなく、私が訪れた二日間もここは閉まっていたところを見ると、そのプロジェクトはもう終わってしまったのかもしれない… 残念です。