泡坂妻夫展

泡坂妻夫展

 遅ればせながら、今年の7/19~8/8まで、東京古書会館の2Fで開催された、泡坂妻夫展の写真を掲載します。
 まずはこんな感じで、懐かしい表紙がズラリ。

秘文字

 ↑1979年に、社会思想社から出版された『秘文字』です。泡坂妻夫・中井英夫・日影丈吉の短編を暗号化し、暗号文のまま出版したというトンデモ企画(暗号を解かないと小説が読めない)。一時は古本屋で時々見かけましたが、最近は見なくなった気がします。

泡坂妻夫展

 さすがは本業・紋章絵師。幼少の頃から絵がうまいです。ちょっと小学生レベルの絵ではないような気がしました。

泡坂妻夫展

 なぜ突然、この写真を掲載する気になったかと言うと… 最近、ある大きな書店で、泡坂妻夫の本が3冊も平積みされていたのを見たからです。

 一つは又吉直樹がTV番組で推薦したという『生者と死者』。もう一つは「口コミで話題! 全国書店で続々ランクイン!!」という帯が付けられた『湖底のまつり』。そして河出文庫で復刊されたばかりの『花嫁のさけび』(ちなみに、河出文庫では来年1月に『妖盗S79号』、3月に『迷蝶の島』が復刊されるようです)。別に生誕◯◯年という節目の年ではないと思うのですが… この騒ぎは一体なに!? と驚いてしまいました。

 この中で私が好きな作品というと『花嫁のさけび』『迷蝶の島』かなぁ。『迷蝶の島』は決して派手ではありませんが、不思議な現象をちょっとしたトリックでサラッと解決してみせる、趣味のいいテーブルマジックのような作品だと思います。

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 作者の没後に話題になった作品というと、数年前に売れた『しあわせの書』、そして今回の『生者と死者』『湖底のまつり』… なぜか異色作の方が評判になっているのは残念です。リアルタイムで読んでいると『折鶴』『蔭桔梗』といった純文学寄りの渋い作品の後に、『生者と死者』が登場した時は「ああ、まだこんな遊び心のあるものを出してくれるんだ」と嬉しかったものですが… これを最初に読んでしまうと、また印象が違う気がする。人によってはバカミスと言われかねない作品たちですからね(笑)。

『11枚のとらんぷ』『乱れからくり』のような王道中の王道を誰かプッシュしてくれないかなぁ。まあ、定番すぎて今更と言われりゃそうなんですが、二十代のミステリファンの中には、読んでない方もいるみたいなんですよね。

「乱れからくり」と「11枚のとらんぷ」

 そういえば今年の谷中一箱古本市で「幻影城出身作家特集」をやった時も、冊数では泡坂妻夫が売り上げトップでした。有名なわりに、絶版が多い作家になっているのかもしれません。
 古本市の準備中に拾い読みで再読した作品の中だと、私は『奇跡の男』が印象良かったかな? この作者らしい論理マジックが味わえる「奇跡の男」、人情噺の「狐の香典」など、なかなかのレベルの短編集。ただ、これも紙書籍は絶版なんですね…

 とりあえず、長いあいだ入手不可能だった『迷蝶の島』の復刊を喜びたいです。



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