旧・江戸川乱歩邸

IMG_2078

 一般公開されてから、一度は行きたいと思っていた西池袋の旧・江戸川乱歩邸。夏休みを利用して、初めて行ってまいりました。

IMG_2076

 公式サイトを見ても住所が載っているだけで、地図や道順が書かれていないので少々不安でしたが、立教大学の正門近くをウロウロしていたら、あっさりこの案内板が見つかりました。非常にわかりやすい場所にあるので、これから行く方はご安心を。

IMG_2098

 乱歩がここに引っ越したのは、昭和9年(1934)の7月。当時は母屋(大正10年築)と土蔵(大正13年築)だけが存在したらしい。家賃は月90円。その後昭和23年(1948)に所有者から購入、昭和32年(1957)にタイル貼りの二階建て洋館が増改築され、現在の形になったようです。

IMG_2101

『探偵小説四十年』の「池袋三丁目に移転」という随筆には「池袋の家にも昔風の土蔵がついていた。実はそれが気に入ったのである」という記述があります。この土蔵は、昭和20年(1945)4月13日の空襲では、母屋に対する防火壁の役目をはたし、続く5月25日の空襲では、屋根瓦が燃えただけで難を逃れ、結局、この家を焼失から守る役目も果たしたようです。

IMG_2084

IMG_2109

 展示品は決して多くはありませんが、「D坂の殺人事件」の決定稿とは別バージョンの原稿など、面白いものもありました。

IMG_2089

 実際に訪れるまでは、乱歩邸=薄暗い土蔵のイメージだったのですが、いざ行ってみると、乱歩ほどの有名作家(しかも流行作家)の自宅としてはこじんまりとして、住み心地も良さそうです。乱歩がここに引っ越した昭和9年というと、『怪人二十面相』(昭和11年)の連載が始まる2年前。つまり、少年探偵団シリーズはすべてこの家で書かれたことになります。

 最近の家は間取りが合理的になって、仏壇しか置いていない「仏間」とか、お客さんが来たときしか使用しない洋風の応接間とか、人が居つかない部屋があまりないのだけれど、乱歩の少年探偵団には、人けがない部屋に気配がする、誰かいるといった不安感をうまく描いた物語がたくさんあった気がします。この写真の応接間を見ていると、そんな、少年探偵団に出てきそうな雰囲気の部屋を久しぶりに見た気がしました。



コメントを残す

*