2016年版このミス雑感〜『スキン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー

Skin_collector

 今年は籍を入れたばかりの甥っ子が、嫁さんとともに高知に帰省。久々に賑やかで、慌ただしい正月を過ごしました。
 そんなわけで、1月も下旬になって、今更ながら「2016年版このミス」の雑感です。
 今年の私の予想はこれ↓でした。

 インドリダソンの『声』は自信の複勝。
 穴狙いで『紙の動物園』の複勝。
 ディーバーの水準作なら、今年は上位狙えると思うので『スキン・コレクター』の複勝と単勝をちょっと。
(なお、複勝はベストテン入りしたら的中のルールです)。

 うーん。まあ、当たった… のかな。しかしこの馬券、もしもどこかのブックメーカーで購入していたとしたら「予想は当たったがトリガミ」の可能性大です。ディーバーの単勝をガッツリ買うのは無理だったもんなぁ。『紙の動物園』は狙い過ぎでしたね。これはやっぱりSF枠か。国内編を含め、全体的に小粒な印象で、一強と言われた『ジェノサイド』の年、または二強対決といわれた『64』vs『ソロモンの偽証』の年は、まだ恵まれてたんだなぁ… という感想。

(※以降の文章は『スキン・コレクター』を未読の方はご注意を。ネタバレの可能性があります)。
 さてディーバーの作品としては『ウォッチメイカー』以来のベスト1となった『スキン・コレクター』ですが、内容的に同水準かというと私は疑問。出だしは期待させます。まず今回は、アメリアやトムの容姿や服装が、初登場シーンでしっかり描写されている。ここ数作は「アメリアやトムの外見なんて、みんな知ってるよね?」と言わんばかりに、描写が省略されることが多かった。セリットーの「皺くちゃのコート」なんてフレーズ、久々に見た気がしました(訳のせいかもしれませんが…)。

 そして相手は、ボーン・コレクターを思わせる猟奇連続殺人鬼。うんうん、やっぱりライムの相手は猟奇殺人鬼じゃないとね。サブキャラのTT・ゴードンもいい味出してる。このあたりまでは、11作目にして作者がシリーズのリセットを狙っていることが伝わってくるようで、多いに期待したのですが… 残念ながら後半の展開は、パムやウォッチメイカーなど、過去のシリーズキャラクターに頼り過ぎ。作者にシリーズのリセットを狙う意図がもしあったなら、過去の作品を読んでいなくても、これ一作で楽しめる内容にして欲しかった。

「もう、トムやセリットーが狙われるしか、サスペンスを盛り上げる手段がないよね」とは、ここ数年、ディーバーのファン、誰もが言っていたことですが、今回、ディーバーはその通りのことを実行する。が… いざ、それが起こってみると「助かるだろうな」と思ってしまった自分に気づく(汗)。そしてまた作者のほうも、トムやセリットーを死なせたら、世界中から非難を受けることが解っているから難しい。

 例えば前作『ゴースト・スナイパー』のリディア・フォスター。彼女は前半の鍵を握る目撃者であり、その行方を多くの人々が追っているが、暗殺者によってあっさり殺されてしまう。しかし、サスペンスを盛り上げるためには、むしろ彼女のような「その作品にしか登場しない人物」の生死のほうが大事だったんじゃないのか? そう思ったことを、今更ながら思い出しました。

 …とまあ、辛口なことばかりを書いてしまいましたが、第一作の(邦訳の)出版から16年が過ぎて、まだベストテン入りを狙えるクオリティを維持していることは驚異的です。今後、もしこのシリーズがリセットに成功するとしたら、それはウォッチメイカーを封印することができた時だと、個人的にはそう思います。



コメントを残す

*