年末年始の備忘録2〜『夜の床屋』沢村浩輔など

さて、年が明けて東京に戻り、早速神保町へ本漁りに行ったところ、某書店にこんなPOPが!

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友人に「カーが売れている」とLINEしたら、「本当に売れているのか?」と疑われてしまいました(笑)。まぁ、売れてるかどうかは別として、書店がプッシュしているのは事実です。いい時代になったもんだ。


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その某書店が昨秋から平積みで推しているのが、この『夜の床屋』。2011年に出版された『インディアン・サマー騒動記』を、文庫化にあたって改題したものだそうです。この改題は大賛成。『夜の床屋』のほうがはるかにソソられる。そもそも本文中に「インディアン・サマー」なんて単語が出て来た記憶がないし…

七編が収録されている連作短編集ですが、最初の三編は快調。無人駅の駅前で、深夜に突然営業を始めた床屋は何なのか(夜の床屋)、泥酔して眠っていた女子学生の部屋で、朝になったら絨毯だけが消えていた(空飛ぶ絨毯)、見知らぬ小学生に、ドッペルゲンガー探しを手伝って欲しいと頼まれる(ドッペルゲンガーを捜しにいこう)など。解決が強引なのが気になるけれど、この手の短編は多少強引でも、事象と解決の落差がある方が面白い。

問題は後半。最後の数編で、それまでの短編すべてを収斂させる展開が用意されていますが、SF、もしくはファンタジーのようなオチに着地してしまう。これは評価が難しい。ひとつひとつの短編が完全に独立していたら、いい作品が入っている短編集として他人に薦めることができるけれど、全体をつなげてしまうと長編の一部、もしくは作品集全体として評価するしかなくなる。するとこの作品は点が低くなる。とりあえず、著者の次回作が今月末に発売されるらしいので、読んでみようと思います。ミステリ作家の場合、デビュー直後に無茶をやっていた人のほうが大化けする傾向があるしね。どことなく気になる作家さんではあります。

shokei 

年末になって『女王』『処刑のための十章』と連城三紀彦の未刊行の作品がバタバタ出版されたので、これはベストテン狙ってるなと思ったが… 結局、年内に読み終えることができたのは、逆にベストテン入りしなかったこれ(処刑のための十章)一作きりでした(笑)。まぁ、そうだろうなぁ… もともと連城三紀彦は、大トリック一発より、細かいトリックを積み重ねて不思議な事象を演出する人ですが、この作品の後半はややクドい印象がある。作品全体がもう少し短くてもよかったかも。

気になったことがひとつ。事件に関係する女を乗せたタクシーの運転手が、「駅に向かうのだと思った」という一文がありますが、これは間違いです。事件の舞台となる高知県土佐清水市に駅はありません。なぜすぐに分かったのかというと、私の出身地だからです(笑)。トリックとは関係ない部分なので「バス停に向かうのだと思った」と書き換えても別にかまわないんですが、作者の連城三紀彦氏がすでに亡くなっているわけで、この場合、訂正することはできるんでしょうかね??

いやホント、私から見れば「あまちゃん」の北三陸なんて大都会でしたよ。だって鉄道が通ってるじゃないか(笑)。



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