年末ベストテン 終盤戦

気がつけば有馬記念まで二ヶ月を切ってしまいました。

そろそろ年末の「このミス」予想が活発になってくる時期ですが、もはや私は参加不能。特に日本編は、何が本命視されているかも分からない状態。例年なら海外物はいくつか読んでいるのですが、今年は古典に走ったり、連城三紀彦を読み返したり、気がつけば新作をほとんど読んでいない。ただ、海外物も例年より話題作が少なかった気がしますが。

とりあえず、下半期に読んだ作品のなかから、気になったものの感想を。

駄作

『駄作』(ジェシー・ケラーマン)
かつて作家を目指していた大学教授・プフェファコーン。親友のベストセラー作家・ビルの葬儀に参列した折、未発表原稿を発見し、それを自分の名義で出版してしまう…

父=ジョナサン・ケラーマン、母=フェイ・ケラーマンというミステリ界のサラブレッド。当然、期待して読みましたが、読者の意表を突く展開でありさえすれば、整合性など考えず詰め込んだ感じ。違う言い方をすれば、章ごとにジャンルの違う小説を読まされたよう。心理サスペンスから始まって、冒険小説、最後は… ファンタジーですか?? 楽しめたかというと微妙です。

もう一度

『もう一度』(トム・マッカーシー)
主人公の「僕」は交通事故で記憶を失うが、代わりに巨額の示談金を手に入れる。彼はその示談金を、事故の後、一瞬だけフラッシュバックした記憶の「再現」に投入する。まず、記憶に近い建物を購入し、壁の割れ目まで作り込み、さらに建物の住人として役者を雇い、いよいよ「再現」がスタートするが…

主人公が失われた記憶を追い求める展開ならば、『ドグラ・マグラ』になったんですが… 彼が求めているのは、事故の後、現実感を失ってしまった生活に「リアルさ」を取り戻すことであり、フラッシュバックした記憶がいつどこで見たものなのかに興味はない。この動機に切実さを感じられればサスペンスが生まれたと思うが、個人的にはあまり感じられず、再現が成功しても失敗してもどちらでもいいとさえ思えてしまう。

映画化が決まっているらしいが、ふんだんに金をかけた「再現アート」味わえ… ならば映像のほうがよさそうだ。このネタは文章とは相性が悪かったんじゃないだろうか。

ペナンブラ氏の24時間書店

『ペナンブラ氏の24時間書店』(ロビン・スローン)
失業中の元ウェブデザイナー・クレイは、サンフランシスコの一風変わった古本屋に再就職する。手前は普通の本屋だが、店の奥地には貸し出し専門の見たこともない本が並んでおり、さらにそれを借りに来る、正体不明の老人たち…

主人公の彼女はGoogle勤務。今どきはファンタジー小説の主人公になるにも、Googleにコネがないとダメなのか。このGoogleの技術に関しては、詳しい人が読むと怪しい点もあるらしいですが、ネットが当たり前の時代のファンタジーとして、いろいろ格闘していると思う。なにしろ行方不明になった人物の立ち寄りそうな先を探すのに、現地へ出向く前にまずストリートビューを使う。とはいえ、小道具を入れ替えているだけで、物語の骨組みは古典的なので安定感があります。


この中で「このミス」予想の馬券を買うとしたら、『ペナンブラ氏の24時間書店』の複勝ぐらいか。ファンタジーだが、ミステリ扱いされる可能性はあるだろう(笑)。『駄作』は両親のネームバリューからしてミステリ扱いだろうけど、個人的にはジャンル違いの気がするし。

まあ、複勝一点勝負では淋しいので、ディーバーの新作など、これから追い込むつもりですが。



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