『ポーカー・レッスン』ジェフリー・ディーバーなど

twisted

どんでん返し以外、何もない短編集。だがそれがいい。この路線は小説が上手くないと駄目で、日本でこのタイプの書き手といえば泡坂妻夫や連城三紀彦が浮かぶが、解説者もそう思ったようで名前が出てきます。

叙述トリックをやるなら、このぐらいスマートにやってほしいし、それが長編を支えるに足るトリックなのか、短編ネタなのかは作者が的確に判断して欲しい。ディーバーは流石、そこは合格点。

とにかく日本の叙述トリックの流行は、そろそろいい加減にしてほしい。今年になって、なぜか『模倣の殺意』がリバイバルヒットしているが、個人的にはフレッド・カサックの『殺人交差点』の復刊の方がはるかにグッジョブ。これと「アクロイド」と「泡坂妻夫の某長編」の三作で、叙述トリックの基本パターンはすでに出尽くしてる。『シックス・センス』みたいな映画は10年に一本あればいいわけで、毎年々々「シックス・センスのバリエーション」が二作も三作も出てくる日本の現状は、明らかに変だと思うんですが…

話をディーバーに戻すと、収録作品で好きだったのは「生まれついての悪人」「動機」など。二転三転する作品より、バレてもいい覚悟で一発勝負に賭けた作品のほうが出来が良かった気がする。

ディーバーの新作、今年はこれ一作きりかと思ったら、秋にはキャサリン・ダンス・シリーズの『XO』が発売されるらしい。となると、「このミス」狙いはそちらの方か?

hhhh

一部で話題になっている『HHhH』も最近読了。「斬新な手法で書かれた歴史小説」というより、「エンスラポイド作戦を描こうと格闘する作者」が主人公の純文学。そう考えたほうがすんなり読める。今年読んだ中で一番の力作だったのは確か。



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