『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』ゾラン・ジフコヴィッチ

07-19 00.26.50

恐怖と笑いは紙一重、エスカレートしすぎると笑ってしまうとはよく言うが、「意外な展開」とお笑いも似た関係なのか。この短編集の一作目「ティーショップ」の中盤の展開には、思わず吹き出してしまった。

ある女性が旅の途中に、駅前のティーショップに入る。いつもならカモミールティーを頼むのだが、ふと変わったことがしたくなり、メニューの最後にある「物語のお茶」という一品を頼んでみることに…

ティーショップの店内で繰り広げられる不条理劇。しかし主人公の感情の流れが自然だから、置いてけぼりされることなく無理なくついて行ける。短編映画や演劇向きの題材のようにも思ったが、実際は映像化すると先読みされてしまうネタだろう。映像ならピントが合ったものはすべて見られてしまうが、文章なら描写しながら、その描写に濃淡をつけることができる。文章とは不自由なようでいて、こんなときには有能だ。

作者のゾラン・ジフコヴィッチはユーゴスラビアの作家で、日本で現在流通しているのは、この短編集だけらしい。正直「ティーショップ」が良すぎたせいか、他に収録されている二編の印象が薄いが、ぜひ他の作品も読んでみたい。代表作と言われる『The Library(図書館)』はタイトルからして魅力的なのだが…



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