『第四の扉』『七番目の仮説』『赤い霧』ポール・アルテ

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『第四の扉』
なるほどね… こういう人だったんだ。
まあ、ミステリの犯人は、何もやってないような表の顔と裏の顔はあるのが普通… にしてもこれは凄すぎ。『狂人の部屋』でも思ったけれど、むしろデビュー作のこちらのほうがひどい(笑)。
カーもポール・アルテも、どちらも解決に負担がかかるタイプの作家だけど、カーの場合はその負担が物理的な方向(瀕死の状態で歩けるのか?とか)にかかるのに対し、アルテの場合は登場人物のキャラ設定にかかってくる。トリックが行える立場にいる人物なら、解決でそれまでのキャラクターが崩壊しても無視なんですよね。
これがカーになると、主人公&ヒロインは絶対に犯人にならない。大抵はあまり目立たない「犯人候補の登場人物」の中から出る(笑)。 そういう意味では似たり寄ったり、しょせんはTVの時代劇程度の人物描写しかしていないんだけど、おかげで「キャラ崩壊」は免れている気がするんですよね。
トリックは日本の新本格の某作品とまったく同一。わずか一年違いで(アルテの方が一年先)、同じトリックを使った作品がフランスでも出るのが面白い。

『七番目の仮説』
不可能犯罪という趣向は、設定が完璧であればあるほど、「事件を起こせるタイミングはここしかない」と読者に推測されてしまうものらしい。厳重に封印された箱から奇術師が脱出したら、タネは封印する前か、後しかないのだから。前半の人間消失事件は、厳重すぎる設定がアダになってしまったようで、推測は可能。
後半は容疑者が極端に少ない中でのフーダニット。この趣向を作品のウリにしてくれたほうが、自分の好みには合ってたかもしれない。
冒頭に登場する、ペストの医者の不気味さは秀逸でした。

『赤い霧』
1887~1888年を舞台に、前半はいつもの密室犯罪。後半は切り裂きジャック事件。一冊で二度おいしい… とはとても言えないほど、前半と後半が分離してます(笑)。私はむしろ二部のほうが面白かった。
切り裂きジャック事件の舞台となったドーセット・ストリート(Dorset Street)。地図で検索してみたがヒットしない。まあ、そうだよね。ロンドンの街にとっては名誉な記憶ではない。ここがかつてのドーセット・ストリートですよ! と堂々と宣伝するわけはないわな(笑)。
でも気になったので、ストリートビューで「大体このあたりでは?」と目星を付けた地区を歩き回って見つけました。なに酔狂なことやってんだ、自分(汗)。

海外の新本格、と割り切って読めばそれなりに楽しい作家さんですが、そろそろ疲れてきたので次の作家に行きます(笑)。

by kaji



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